稲フィル☆つうしんVol.6  

                             平成20年12月14日発行

「中国の不思議な角笛」

 高校、大学とホルンをやってきて、大学を卒業する時これでホルンとはお別れだと思い、

楽器は学校に置いてきた。

 ところが、それから二十数年を経て今年、我ながら唐突にホルン及びオケに復帰。実に

温かく稲フィルの皆さんに迎えていただき、忘れかけていた合奏の楽しさを思い出した。

 新しく買った楽器は銀色に輝く、中国の不思議な角笛。ブランクが長くて、音をまとも

に出せない状態で探したので、見た目と価格だけで選んだ中国製。

 ところが、だんだん音を出せるようになるにつれ、「?」と感じた。音程が極度に悪い、

高音が出ない、音が当たらない(外れる)。でも音色は悪くない。まさに中国の不思議な

角笛。

 これはホルンの形をしたオブジェかな、またお金を作って有名メーカーの楽器を買おう

かなと思いつつ、念のため「楽器の欠点を直せるリペアマンっていないのかな」と探して

みると、いらっしゃいました、日本に一人。

 それから、練習の合間を縫って、その「世田谷の師匠」のもとに何度通ったことか。ど

こかを直すと予期しない新たな欠点が出たりして師匠も頭を抱える場面も何度かあった。

私もホルンに復帰して間がないのに、曲や合奏に慣れるのに加えてどんどん変わっていく

楽器の特性に慣れることができず混乱することもあった。

 でも、その結果、楽器は演奏会に使えるまでになった。師匠、有り難うございます。

本番、頑張りますが、ときどき音を外すかもしれません。私のせいじゃありません。

楽器のせいで(笑)


                                         (Hr M.H)


「冷たい雨」

 外はもうすっかり暗くなっている。おまけに雨まで降り出した。

「雨かぁ、嫌だなあ・・・」ストーブにぬくぬく温まりながらテレビの旅番組でも見ていたい

という気持ちがもたげてくる。オーケストラ(以下オケ)の練習は毎週土曜日、夕方6時半

ごろから始まる。11月にもなれば家を出る頃はもう真っ暗だ。総重量10?のチェロもいざ練

習場へという私の足を引っ張り、一週間全く練習出来なかった日は、気持ちまでトホホと萎

えてくる。

 でも、とにもかくにも楽器をしょって家を出る。駅までゆっくり、これから合わせる曲の

ことを考えながら歩いて行く。チェロの重さが少し気にならなくなってくる。

 練習場に着いて、オケの皆が集まり始めた部屋のドアを開けるその瞬間がとても嬉しい。

練習が始まるまでの短い時間、おしゃべりしながら楽器や楽譜を準備する。楽譜は何とウィ

ーン・フィルもN響も稲城フィルも同じものを使用している。オケの楽譜にプロ用もアマチュ

ア用もないからだ。その上、アマチュアが曲目を選ぶ時は、腕前のあるなしはとりあえず棚

に上げて、「やりたい!」その一心で突き進む。腕が追いつくのを待っていては、ベートー

ヴェンもブラームスも音楽室の壁に貼られた遠い国の人たちで終わってしまう。現に本日の

プログラムもあまり日本人向きとは言えない、所謂フランスものとスラヴものという取り合

わせになっている。「フォーレって訳分からん」と練習中何度も思った。

 アマチュアの財産はやりたい気持ちだ。腕前も環境も各々お家の事情は違っているけれど、

こんな演奏では作曲家が化けて出てくるのではと良心がちくりとなることもあるけれど、何

よりも皆でこの曲を演奏したいという気持ちを大切にしたい。冷たい雨が降る中、楽器を背

負って練習に向かう時もそんな思いが後押ししてくれる。

                                         (Vc K. W)